新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、中国の武漢市で第1例目の感染者が報告されたのは2019年12月初旬だった。
その後、ほんの数カ月で、パンデミックと言われる世界的な流行となって、日本だけでなく世界中の経済が停滞したのは、皆さんもまだ記憶に新しいことだろう。
コロナ禍により、飲食に関して我々は、外食が制限されるようになり、「非対面」や「テイクアウト」が推進された結果、巣ごもり需要が増加した。
この時期に急速に普及したのが、飲食店の「配達サービス(ウーバーイーツ)」と、「冷凍自動販売機(冷凍自販機)」ではないだろうか。
これらは、令和5年(2023年)5月8日に「5類感染症」に移行となり、行動制限が無くなってきた中でも、これらのサービスは無くなることなく、年々普及を続けている。
ここでは、中でも「冷凍自動販売機(冷凍自販機)」について、「人手不足の解消」に一役買うことが出来るのか、見ていきたい。
「冷凍自販機」とは?
「冷凍自販機」とは、文字通り冷凍食品を販売する自販機のことだが、これまでの「冷凍自販機」といえば、アイスクリームぐらいではなかったか。
「冷凍自販機」は、コロナ禍の様々な行動制限により、その機能はどんどん進化し、今ではアイスクリームだけでなく、ラーメンやギョーザ、チャーハン、ハンバーガー、ブランド牛、カレー、スイーツなど、様々な「冷凍食品」が販売されている。
まさに、事業者側から見れば、簡単にどこでも設置できる様になり、人手不足の解消にもなるかもしれない。
そして、冷食の購入者から見ると、時間を気にせずいつでも、手軽に購入できるので、お互いにウインウインの関係だ。
「冷凍自販機」の普及の背景
「冷凍自販機」が普及した背景には、いくつかの要因があり、その主要な要因は以下の通り。
1.消費者のライフスタイルの変化
- 忙しい生活を送る人々が増え、手軽に食事を準備できる冷凍食品の需要が高まっていて、特に一人暮らしの若者や、共働きの家庭では、時短になる冷凍食品が好まれている。
2.技術の進歩
- 冷凍技術や保存技術の向上により、品質の高い冷凍食品が市場に出回るようになり、冷凍食品の味や栄養価が新鮮なものと変わらないレベルにまで向上した。
3.コロナウイルスの影響
- 新型コロナウイルスの影響で外出が制限される中、非接触で食料を購入できる自販機の需要が増えたことと、「宅配サービス」が混雑する中、自販機は迅速に食料を入手する手段として注目された。
4.利便性の向上
- 24時間いつでも利用できる自販機は、忙しい消費者にとって非常に便利で、設置場所も駅、オフィスビル、学校など多岐にわたるため、アクセスしやすい点も普及の要因。
5.企業の戦略
- 食品メーカーや流通業者が、新しい販売チャネルとして自販機に注目し、積極的に導入を進めていて、冷凍食品のラインナップが充実し、消費者の選択肢が広がった。
6.環境配慮
- 冷凍食品は長期間保存できるため、食材の無駄を減らすことができ、食品ロス削減の観点からも、冷凍食品の利用が推奨されるようになっている。
※これまでは、商品の大きさに制限があって、小さな商品しか販売できなかったが、この様に、冷凍技術の進歩に加え、自販機の進歩(棚(ストッカー)の工夫を行うこと)で、商品の形を崩さず大きな商品を入れることもでき、小さな商品も販売できるなど、いろいろなサイズの商品が販売できるようになった。
また、24時間、365日、いつでも名店などの本格的な味を手軽に楽しめることが、消費者に受けているとのこと。
「冷凍自販機」のメリットとデメリット
この様な要因により、自販機の普及が進んでいるが、「冷凍自販機」の「省電力化」が進んだことにより、販路拡大の際には、新店舗を出店するよりも、「初期費用」や「運営コスト」がともに、抑えられるという利点が大きく、冷凍食品メーカーは、直販ルートとして注目しているそう。
「冷凍自販機」のメリットとデメリットは、以下の通り。
メリット
1.24時間365日利用可能
- いつでも利用できるため、忙しい消費者や夜間に食料を必要とする人々にとって非常に便利。
- 企業側は、人件費をかけずに、電気代のみで販売できるのもメリットで、人員を雇う必要もなく、大幅なコスト削減につながる。
2.利便性
- 手軽に食料を購入でき、特に料理の準備に時間をかけたくない場合や、急な食事の必要性が生じた場合に役に立つ。
3.品質の維持
- 冷凍保存により、食品の鮮度や栄養価を長期間保つことができるため、安心して購入・消費できる。
4.食品ロスの削減
- 長期間保存できる冷凍食品は、消費期限が比較的長く、食品ロスを減らす効果がある。
- 冷凍食品は、大量に作り置きができるため、その日の人手を予想する必要がなく、食品ロスを削減すれば、利益率を高められる。
5.非接触での購入
- 自動販売機は、人との接触を避けることができるため、特に感染症のリスクが高まる状況下では、安全性が高い。
6.多様な設置場所
- 駅、オフィスビル、学校、ショッピングモールなど、多くの場所に設置されているため、アクセスが容易。
7.人件費の削減
- 自販機を導入すれば、商品の補充をするだけで、商品の営業や精算、監視などは自販機に任せるだけなので、人件費の削減につながる。
8.集客や認知度向上
- 冷凍食品の自販機があると、店舗への集客や認知度向上に役立つ。
- 店舗の前に自販機を設置すれば、店舗の存在を認知してもらえるので、販売の機会が広がる。
- 店舗の閉まっている夜間の時間に営業できるため、営業時間外に店舗の前を通り過ぎていた人にもアプローチでき、新たな顧客の獲得につながる。
デメリット
1.商品ラインナップの限界
- 自販機のサイズや容量に限りがあるため、スーパーやコンビニに比べ、商品ラインナップが限られる。
2.価格が高め
- 自販機で販売される食品は、通常の小売価格よりも、高めに設定されている場合がある。
3.技術的な問題
- 自販機の故障や冷凍機能の不具合が発生すると、食品が適切に保存されず、品質が低下するリスクがある。
4.電力消費
- 冷凍自販機は、24時間、365日稼働するため、電力消費が高く、環境負荷が懸念される場合がある。
5.購入の際の制約
- 自販機では、商品を大量に購入する場合、一度に多くの食品を取り出すのが難しいことがあり、支払い方法が限られている場合もある。
6.サービスの限定性
- 冷凍食品を温めるための設備や調理器具がないと、購入後すぐに食べることが難しいことがある。
7.リース料金が高い
- 自販機のリース料金は高額で、業界最大手の機械では、「年間約80万円」の費用がかかるため、初期費用を用意する必要がある。
8.盗難や破損の可能性
- 自販機を設置すると、無人で販売を行うため、盗難や破損のリスクがあり、トラブルが起こってもすぐに対処ができない可能性がある。
主な「冷凍自販機」メーカー
【サンデン・リテールシステム社】「ど冷えもん」
引用元:【サンデン・リテールシステム社】「ど冷えもん」
【富士電機株式会社】「FROZEN STATION」
引用元:【富士電機株式会社】「FROZEN STATION」
【株式会社スマリテ】「スマート販売機」
引用元:【株式会社スマリテ】「スマート販売機」
まとめ
「冷凍自販機」は24時間、365日稼働するので、あるメーカーによれば、電気代は「月々約8,000円」であり、通常の自販機の電気代が約3,000円なので、少し高くなるとのこと。
特に、夏場は電力の消費が激しく、電気代も上がってしまうとのことだが、人件費削減のメリットを考えれば、どちらがコスト削減につながるか、しっかりと考える必要がある。
ちなみに人件費として、アルバイト1人に支払う人件費が月10万円とすると、「年間120万円」の計算で、自販機のリース料金は、業界最大手の機械では、「年間約80万円」となるため、長期的な目線で見れば、「冷凍自販機」を導入した方が安上がりかもしれない。
近年は、どの業界でも「人手不足」が問題視されていて、地方の飲食店や食品メーカーでは、後継者や人手不足に悩まされている現状もあり、「冷凍自販機」であれば、商品を補充するだけで販売ができるため、地方だけでなく、都市部でも「冷凍食品の自販機」を導入する事例も多くなってきているのが現状だ。
これらを総合的に勘案すれば、「冷凍自販機」は、今後ますます普及することが想像できる。