吾輩が初めて就職した1985年、今から40年前は、バブル景気前で、徐々に景気が良くなっていく、変わり目にあった頃だ。
その頃は、採用を控えていた企業もまだ多かった様で、就職後も忙しい毎日を過ごしていたように思う。
しかも当時は、パソコンは、十分に普及しておらず、アナログで手作業が多く、作業効率が悪く生産性も上がっていなかった。
そして、2024年現在の日本では、「人が足りない」という言葉が、社会のあらゆる場面で、聞かれるようになっている。
企業では、人手不足が深刻化し、サービスや製品の提供が、滞る事例も増えている。
地方では、若者が減り、限界集落が増加。
さらに、医療や介護の現場では、必要な人材が不足し、高齢者の支援体制が、追いつかない状況だ。
この背景には、日本が抱える人口減少という、大きな問題がある。
人口減少は、少子高齢化の進行によって加速しており、今後も続くと予測されている。
労働人口が減ることで、経済活動が縮小し、地域社会の衰退が懸念されている。
ここでは、この課題に対し、国と民間がそれぞれ対応策を講じているが、その対応策などについて、見ていきたい。
『人が足りない!人材不足』と言われる日本の現状
日本では、「人が足りない」とよく耳にするが、その背景には、深刻な社会問題が隠れている。
日本の労働力不足は、多くの業界で深刻化しており、これからさらに悪化すると、考えられている。
日本が直面する、具体的な課題について、見てみよう。
(1)人口減少と高齢化の進行
日本の人口は、長年にわたって、減少傾向にある。
これは、子どもを産む人が減ったこと(少子化)と、平均寿命が伸びたこと(高齢化)が、主な原因であると言えるだろう。
例えば、20代から50代の、「働き盛り」と呼ばれる年齢層の人口が、減っている一方で、65歳以上の高齢者が、増え続けている。
この結果、働くことのできる人の数が減り、企業は、必要な人手を確保するのが、難しくなっている現状がある。
( 1 )人口減少・高齢化の進行
我が国の総人口は、戦後から増加が続いていたが、2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じ、2020年10月現在では1億2,571万人となっている。年齢構成別では、15~64歳人口(生産年齢人口)が1995年の8,716万人をピークに減少に転じ、2020年には7,449万人まで減少している。一方、65歳以上人口は増加が続いており、2020年には3,619万人となっており、65歳以上人口が総人口に占める割合(高齢化率)も2000年の17.4%から2020年では28.8%まで上昇している(図表Ⅰ-2-4-1)。
図表Ⅰ-2-4-1 我が国の人口の推移
引用元:国土交通白書2021 人口減少・高齢化と経済成長の停滞
(2)若者の地方離れ
地方では、「若者がいなくなった」と言われることが多い。
その理由を考えると、地方と都市部の違いが、いくつも見えてくる。
ここでは、若者が、地方から離れてしまう理由について、見てみよう。
仕事の選択肢が少ない
地方では、働ける会社や職種の数が、限られていることが多い。
特に、若者が希望する、ITやデザインなどの、新しい分野の仕事は、都市部に集中している。
これにより、自分のやりたい仕事を求めて、都会に行く若者が増えている。
学びの環境が整っていない
多くの大学や専門学校は、都市部に集中している。
そのため、高校を卒業した若者の多くは、進学のために、地方を離れることが一般的である。
一度、都市部で生活を始めると、仕事や生活環境の面で、地方に戻る理由を、見つけにくくなる場合が多い。
便利さの違い
都市部には、電車やバスなどの交通機関が整備されており、どこに行くにも、便利である。
一方で、地方では、車が必要だったり、移動に時間がかかったりすることが多い。
また、ショッピングモールや娯楽施設も都市部に多く、地方では、選択肢が少ないと感じる若者もいる。
人とのつながりの違い
地方では、コミュニティが強く、人とのつながりが、密接な場合が多い。
これは、魅力でもあるが、一部の若者には「自由が少ない」と感じられることもある。
都市部では、適度な距離感で、人間関係を築けるため、気楽に感じることがある。
新しい体験や挑戦を求めている
若者にとって、都市部は、新しい出会いや経験が得られる場所、というイメージが強い。
ファッションやアート、音楽などのトレンドが生まれる場所であり、そうした刺激を求めて、地方を離れる人が多い。
総括
若者が地方から離れる理由には、仕事や学びの環境、生活の便利さや価値観の違いなど、さまざまな要因がある。
日本では、多くの若者が、地方から都市部へ移動している。
これは、都市部の方が、仕事や教育の選択肢が、多いからである。
しかし、この動きにより、地方ではさらに人手不足が深刻化し、地域経済や生活の維持が難しくなっている。
この流れを止めるためには、地方が、若者にとって、魅力的な場所になる必要がある。
仕事の選択肢を増やしたり、新しい挑戦を応援する仕組みを作ることが、地方活性化の鍵となるだろう。
(3)働き方のミスマッチ
「人が足りない」と言われる、日本の現状の一因として、働き方のミスマッチが、あげられる。
この問題は、企業が求める働き手の条件と、働きたい人が望む条件が、うまく合わないことによって起きている。
ここでは、その背景と具体例について、見ていこう。
求められるスキルと経験の違い
企業は、即戦力を求める傾向があるため、高いスキルや経験を、条件にする場合が多い。
一方で、若者や未経験者は、「これから学びたい」「挑戦したい」と考えることが多い。
このズレにより、せっかくのやる気があっても、採用されないケースが生じている。
働き方への期待の違い
働きたい人の中には、仕事とプライベートのバランスを、重視する人も増えている。
しかし、長時間労働や休日出勤が、当たり前になっている職場では、働きたくても、応募をためらうことがある。
また、育児や介護をしながら、働きたい人に対して、柔軟な働き方を、提供できない職場も多い。
地域や業界ごとの問題
例えば、地方の企業では、「通勤が大変」「給料が低い」などの理由で、人材を集めるのが難しい。
また、建設業や介護業などの分野では、体力や精神的な負担が大きいという、仕事に対するイメージが障壁となり、若い人が集まりにくい、現状がある。
解決のために求められること
このミスマッチを解消するには、企業と働き手の間で、対話を増やすことが重要である。
例えば、企業側が求めるスキルを明確にしつつ、研修や教育の機会を提供することが考えられる。
また、働き手が希望する、柔軟な働き方を実現するために、テレワークや時短勤務を、積極的に導入することも必要である。
総括
働き方のミスマッチは、企業と働きたい人の両方にとって、損失である。
この問題を解決するには、互いのニーズを理解し、柔軟に対応することが求められる。
どういう事かというと、これから社会に出る新入社員にとっても、自分がどのような働き方を望むのか、を考えると同時に、企業が求めることを、理解する姿勢が大切である。
企業が求めるスキルや条件と、働きたい人の希望が、一致しないことも、人手不足の原因である。
例えば、労働時間が長くて過酷な仕事や、給料が低い職種では、若い人や女性、高齢者が「働きたい」と思えないことが多い。
結果として、特定の業界で、人材が不足する状況が生まれている。
(4)外国人労働者の不足
「人が足りない」と言われる日本では、外国人労働者が、重要な労働力となっている。
しかし、日本は、移民を積極的に受け入れていない国とみられることもあり、外国人労働者の数が、十分ではない。
ここでは、日本が行っている、外国人労働者の確保方法について、見ていこう。
技能実習制度
技能実習制度は、発展途上国の人々が、日本で仕事をしながら、技術を学ぶための、仕組みである。
日本では、建設業や農業、介護業などで、多くの外国人が、この制度を利用して働いている。
しかし、この制度は、「学ぶこと」が目的であるため、労働力としての長期的な確保には、つながりにくいという、課題がある。
また、職場環境や待遇に関する問題も、指摘されている。
特定技能制度
特定技能制度は、外国人が、日本で特定の分野で働くための、新しい制度である。
介護、外食、宿泊業など、特に人手不足が深刻な、12の分野(14業種)で、導入されている。
この制度では、外国人が、日本語や専門的な知識を持っていることを、条件としているため、即戦力として、期待されている。
また、特定技能2号では、家族の帯同が認められ、長期間日本で働くことが、可能となっている。
特定技能制度とは
中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており、我が国の経済・社会基
引用元:出入国在留管理庁 特定技能ガイドブック
盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきているため、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築するために特定技能制度が創設されました。
高度外国人材の受け入れ
日本では、高度なスキルや専門知識を持つ外国人を対象にした、受け入れ制度もある。
例えば、研究者、エンジニア、大学教授などが対象であり、これらの人材は、日本の経済や技術の発展に、大きく貢献している。
外国人留学生の活用
日本では、大学や専門学校で学ぶ外国人留学生が、卒業後に日本で働くケースも、増えている。
留学生は、日本語や文化を理解しているため、職場への適応がしやすいとされている。
これを支援するため、留学生が就職しやすいようにする、施策も行われている。
総括
日本は、外国人労働者を受け入れるために、さまざまな制度を設けているが、これらの取り組みには、まだ課題が多い。
例えば、外国人が、日本で働き続けるための環境整備や、文化や言語の違いへの配慮が、必要である。
新入社員にとっても、外国人労働者と一緒に働く機会は、これから増えると考えられる。
そのため、多様な文化や価値観を尊重し、協力して仕事を進める姿勢が、重要である。
これまで、日本の労働力を補うために、外国人労働者が受け入れられてきたが、その数も十分ではない。
さらに、言語の壁や文化の違いから、外国人が働きやすい環境が、整っていない場合も多い。
(5)テクノロジー活用の遅れ
「人が足りない」と言われる日本では、労働力不足を補う方法として、テクノロジーの活用が、注目されている。
しかし、世界でAIやロボットを使った、自動化が急速に進む中、日本では、その取り組みが遅れているのが、現状である。
ここでは、その理由と背景について、見ていきたい。
テクノロジー活用が進まない理由
日本が、テクノロジー活用に出遅れている理由の1つに、日本人の慎重な気質があげられる。
「失敗を恐れる」「今のやり方を変えたくない」という思いが根強く、新しい技術への挑戦に対して、消極的になりがちである。
さらに、長いデフレの影響で、企業が新しい投資を控える傾向もあり、リスクを伴うチャレンジを避ける文化が、形成されている。
このため、先進技術の導入が、遅れる結果となっている。
テクノロジー活用の遅れの例
具体例として、テレワークの導入があげられる。
新型コロナウイルスの感染拡大時には、多くの企業でテレワークが導入されたが、コロナが収束するとともに、元の働き方に戻る企業が多かった。
これは、日本の職場文化が、「対面でのコミュニケーション」を重視する傾向にあるためである。
また、AIやロボットを活用した、業務の自動化についても、社会実験は行われているものの、広く実用化されるまでには、至っていない分野が多い。
これも、変化を恐れる傾向が強いことと、何事にも慎重すぎるという、国民性なのかもしれない。
テクノロジー活用が必要な理由
少子高齢化が進む日本では、今後ますます労働力が不足すると、予想されている。
この問題を解決するには、AIやロボットなどのテクノロジーを活用して、業務を効率化することが、欠かせない。
特に、介護や物流の分野では、自動化が人手不足の解決策として、期待されている。
また、テクノロジーを活用することで、生産性が向上し、日本企業の競争力を、取り戻すことにもつながる。
我々にできること
我々(老若男女)にとっても、テクノロジーを活用するスキルを身につけることは、これからの時代に、必要不可欠である。
例えば、AIを活用したデータ分析や、オンラインツールを使った、効率的な業務遂行は、若い世代が得意とする分野である。
積極的に新しい技術を学び、職場に提案する姿勢が求められる。
総括
日本が「人が足りない」問題を解決するためには、テクノロジーの活用を進めることが、重要である。
そのためには、失敗を恐れず、挑戦するマインドを持つことが必要だ。
他の国では、AIやロボットを使った自動化が進み、人手不足を補う仕組みが、整えられている。
一方で、日本では、まだこの分野の導入が遅れている部分があり、結果として、人間に頼らざるを得ない業務が多い。
我々も、未来の日本を支える存在として、新しい技術を学び、積極的に提案していこう。
これが、社会の変革を生み出す、第一歩となる。
(6)労働力不足が及ぼす影響(経済停滞、産業の衰退など)
労働力不足が進む日本では、経済停滞や産業の衰退といった問題が、指摘されている。
これに加え、核家族化や一人暮らしの増加による生活コストの増大が、社会全体に、新たな負担を、生じさせている。
ここでは、労働力不足が、具体的にどのような影響を、社会にもたらしているのか、見ていきたい。
経済停滞と産業の衰退
労働力が不足すると、企業は十分な人材を確保できず、生産性が低下する。
この結果、国内総生産(GDP)が伸び悩み、経済全体の停滞を招く。
また、特に労働集約型の産業(建設業、農業、介護業など)は、深刻な影響を受け、産業そのものが、衰退する危険性がある。
産業が衰退すれば、その分野に関連する企業やサービスも減少し、地域経済の活力が失われる、という悪循環が生まれる。
生活コストの増大と貧困化
核家族化や一人暮らしの増加により、1人あたりの生活コストが、高くなっている。
例えば、家賃や光熱費は、1世帯に1回の支払いで済むが、世帯が小さいと、その負担を1人で背負うことになる。
これにより、手取り収入があっても、余裕のある生活ができない人が増え、結果として、貧困化が進む。
さらに、経済的な余裕がないと、消費が減少し、地域経済にも悪影響を与える。
個人への過重な負担
労働力不足によって、1人の人間が抱えるタスクが増えている。
仕事、育児、家事を、全て1人でこなさなければならない状況は、時間的にも精神的にも、大きな負担を強いる。
特に、共働き世帯やシングルペアレント家庭では、家事や育児を効率よく分担する仕組みが不足しており、これが過労やストレスの原因となっている。
結果として、個人の幸福度が下がり、社会全体の活力が失われる。
社会への影響
労働力不足が続くと、社会全体で効率が低下する。
例えば、必要なサービスが提供されなかったり、公共インフラが維持できなかったりする状況が生まれる。
これにより、人々の生活の質が低下し、将来への不安が増幅される。
総括
労働力不足は、経済や産業だけでなく、個人の生活や社会全体にも、広範囲な影響を及ぼしている。
この問題を解決するには、テクノロジーの活用や、働き方改革だけでなく、地域社会全体で協力して、支え合う仕組みを作ることが必要である。
我々も、この現状を理解し、自分ができることを、少しずつ実践していくことで、より良い社会づくりに、貢献しなければならない。
国(政府)が進める人口減少時代への対応策
日本は、人口減少という、大きな課題に直面している。
少子高齢化が進む中、経済の停滞や地域の衰退を防ぐため、国(政府)は、さまざまな対応策を講じている。
その主な取り組みについて、見てみよう。
(1)外国人労働者の受け入れ
日本が、人口減少時代を、乗り切るための対策の1つに、外国人労働者の受け入れがある。
その主要な仕組みとして、「技能実習制度」と「特定技能制度」が運用されているが、現状ではさまざまな課題が、指摘されている。
同時に、これらの制度には、地域社会や経済にとって、期待される成果も多い。
ここでは、制度の概要、現状、課題、そして期待される成果について、見ていこう。
技能実習制度の概要と課題
技能実習制度は、外国人が日本で技能を学び、自国の発展に役立てることを、目的としている。
しかし、現状では、以下の課題があげられる。
労働条件の問題
一部の企業で、技能実習生が、低賃金で過酷な労働を強いられている、との報告がある。
これは、制度の本来の趣旨に反し、「安価な労働力」として扱われる事例が、問題視されている。
監督体制の不十分さ
不適切な運用が行われている場合でも、監査やチェック体制が、不十分であるため、改善が進みにくい。
特定技能制度の概要と課題
特定技能制度は、外国人が特定の産業分野で、即戦力として、働けるようにする、制度である。
この制度では、技能実習制度よりも、高い技能と日本語能力が求められる。
地域社会との調和
地方の中小企業や農業、介護分野などでは、外国人労働者の存在が、欠かせない状況になっている。
しかし、地域住民との文化や言語の違いから、コミュニケーションの難しさが、課題となっている。
定着率の向上
外国人労働者が、日本で長く働き続けるためには、職場環境や生活環境の整備が、必要である。
現状では、孤立感や生活の不便さを感じて、母国に帰るケースも多い。
期待される成果
これらの制度が、適切に運用されれば、日本の労働力不足解消や地域活性化に、大きな効果が期待できる。
労働力の確保
外国人労働者が、不足している分野で働くことで、生産性の維持や、サービスの継続が可能になる。
特に、介護や建設業、農業などでは、その効果が顕著である。
多文化共生社会の実現
外国人労働者との共生を進めることで、地域社会に、新たな文化的な刺激が生まれる。
このような交流は、地方の人口減少問題にも、良い影響を与えると考えられる。
(2)女性・高齢者の労働参加促進
日本が、人口減少時代を乗り切るためには、女性と高齢者の労働参加を、さらに促進することが必要である。
特に、女性と高齢者の労働参加を、促進する取り組みは、国や企業が力を入れている、重要な対策である。
しかし、これらの労働力が、十分に活用されていない理由の一つに、低賃金の問題があげられる。
適正な賃金が確保されないままでは、物価上昇や経済成長の、足かせとなる可能性がある。
女性活躍推進法
男女の賃金の差異の情報公表(令和4年7月8日改正施行)について
日本における男女間の賃金格差は、他の先進国と比較しても依然として大きい状況があります。
こうした現状を踏まえ、更なる縮小を図るため、令和4年7月8日に女性活躍推進法に関する制度改正が行われ、情報公表項目に「男女の賃金の差異」を追加するとともに、常時雇用する労働者が301人以上の事業主を対象として、当該項目の公表が義務付けられることとなりました。
初回の情報公表の時期としては、令和4年7月8日の施行後に最初に終了する事業年度の実績について、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内となります。
(例)事業年度が4月~翌年3月の企業の場合
→ 令和4年4月~令和5年3月の実績を、おおむね令和5年6月末までに公表※ 改正内容等の詳細については、以下をご参照ください。
▶改正内容について
・女性活躍推進法特集ページ【厚生労働省HP】▶リーフレットについて
引用元:厚生労働省 岡山労働局 女性活躍推進法
・女性の活躍に関する「情報公表」が変わります(周知用リーフレット)
ここでは、女性のキャリア支援とシニア雇用促進の現状、課題、期待される成果について、見ていこう。
女性のキャリア支援(保育所の充実、長時間労働の見直し)
女性が、活躍しやすい環境を作るために、以下のような取り組みが、進められている。
保育所の充実
子育て中の女性が、仕事を続けられるよう、政府は、保育所の増設や、保育士の待遇改善に取り組んでいる。
これにより、待機児童数は、減少しているものの、都市部では、依然として需要に追いついていない。
また、無認可保育施設を利用せざるを得ない家庭も多く、質の向上と費用負担軽減が、課題である。
長時間労働の見直し
残業時間の上限規制や、フレックスタイム制度の導入により、育児や家事を担う女性が、働きやすい環境が、整いつつある。
しかし、これらの取り組みが、十分に実施されていない企業もあり、法の徹底や監視が求められる。
働き方改革の目指すもの
「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。
働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。働き方改革の全体像
働き方改革の基本的な考え方
「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
引用元:厚生労働省 働き方改革関連法に関するハンドブック
※これ等の関連法は、改正がされるため、新しい情報を確認してください。
シニア雇用促進(定年延長や職場改善)
高齢者の労働力を、有効活用するため、次のような取り組みが、行われている。
定年延長や継続雇用制度
多くの企業で、定年を65歳に引き上げたり、希望者全員が働き続けられる、継続雇用制度を導入している。
さらに、政府は、70歳までの就業機会確保を企業に求める、法改正を行った。
これにより、高齢者が、職場で長く活躍する道が開かれている。
企業は、70歳までの就業機会確保が求められており、定年延長や継続雇用制度を導入する企業が増加している。
これにより、年金だけで生活できない高齢者の収入が、安定しつつあるが、多くの場合で賃金は、現役世代より低く設定されている。
高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されています。
改正内容
引用元:厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
賃金適正化の必要性
女性や高齢者の労働参加が進む一方で、賃金の低さが課題として、浮上している。
低賃金が続くと、消費が増えず、物価も上がらないため、経済成長を妨げる要因となる。
適正な賃金を確保することは、以下のような効果が、期待される。
経済の活性化
賃金が適正化されれば、消費意欲が向上し、内需の拡大につながる。
これにより、企業の利益も増加し、さらなる投資や、雇用創出が可能になる。
働きがいの向上
賃金が公平であれば、労働者の意欲が高まり、生産性の向上が期待される。
特に、女性や高齢者が、自身の労働価値を認められることで、社会全体の活力が増す。
(3)デジタル化・自動化の推進と地方自治の課題
人口減少時代を乗り切るため、日本では、デジタル技術や自動化を活用した、さまざまな取り組みが進められている。
これらの施策は、労働力不足を補い、地方や都市部の効率化を図ることを、目的としている。
しかし、地方における過疎化問題や、地方創生との矛盾とも言える課題も、浮き彫りになっている。
ここでは、AIやロボット技術の活用、地方のスマートシティー化、地方自治のあり方について、見てみよう。
政府が進めるデジタル化と自動化
日本では、デジタル技術を駆使して、社会全体を効率化することが、目指されている。
主な施策には、以下がある。
AIやロボット技術の活用
AIを使った業務の自動化や、介護ロボットの導入が、進められている。
例えば、介護現場では、ロボットが人を持ち上げたり、移動を補助したりする技術が実用化されており、介護職員の負担軽減に、つながっている。
自動運転技術の導入支援
高齢化が進む地方では、公共交通機関の維持が、困難になっている。
政府は、自動運転バスの導入を支援し、高齢者の移動手段を確保することで、地域の生活インフラを、守ろうとしている。
スマートシティー化の推進
地方の自治体では、IoT(モノのインターネット)やAIを活用したスマートシティー化が、進められている。
これにより、効率的なエネルギー管理、遠隔医療の導入、災害時の迅速な対応が、可能になると期待されている。
過疎化とスマートシティー化の課題
特に地方では、過疎化が深刻であり、スマートシティー化を進める一方で、限界集落やその周辺地域では、廃村を余儀なくされる場合もある。
限界集落と廃村問題
高齢化が進み、地域に住む人がほとんどいなくなった「限界集落」は、自治体としての維持が困難になりつつある。
そのため、住民を中心部に集め、効率的にサービスを提供する計画が、進められている。
しかし、これにより、住み慣れた土地を離れなければならない高齢者の心情や、地域文化の消失が、懸念される。
地方創生との矛盾
一方で、政府は、地方創生として、地域の活性化を目指した取り組みも、進めている。
農業や観光業の振興、新規移住者の支援などで、地域を盛り上げる努力がされているが、過疎化が進む地域とのギャップが大きく、全体として、一貫性に欠ける印象がある。
地方自治のあり方
地方自治体は、地域の特性を生かした自立的な運営が求められるが、人口減少により、その実現が難しくなっている。
今後の課題として、次の点があげられる。
広域行政の導入
複数の自治体が連携し、行政サービスを、広域的に提供する仕組みが、必要である。
これにより、コスト削減やサービスの質向上が、期待される。
デジタル技術のさらなる活用
地方でも、デジタル技術を導入することで、少ない労働力で、高品質なサービスを提供できるようにする、必要がある。
特に、行政手続きのオンライン化や、AIを活用した住民サービスの効率化が、鍵となる。
地域住民の意識改革
地域の発展には、住民自身が地域課題を理解し、自発的に協力する姿勢が、重要である。
誰も取り残さないようにするための教育や、啓発活動も必要だ。
民間企業が進める人口減少時代への対応策
人口減少時代を乗り切るための対策は、国の政策だけでなく、民間企業でも積極的に行われている。
企業は、働き方改革やテクノロジーの活用を進めながら、地域社会と協力して労働力不足を解消し、魅力ある働き方を提供する取り組みを行っている。
ここでは、民間での具体的な取り組みを事例とともに見ていこう。
(1)働き方改革の推進
民間企業は、働きやすい環境を整えることで、幅広い層の労働力を取り込む努力をしている。
テレワーク(リモートワーク)の採用
新型コロナウイルス感染症を契機に、多くの企業がテレワーク(リモートワーク)を導入した。
テレワーク(リモートワーク)、は通勤の負担を軽減し、育児や介護と仕事の両立を可能にする。
例えば、大手IT企業のサイボウズは、テレワーク(リモートワーク)を活用しながら個人の働き方に柔軟に対応する制度を設け、生産性の向上と従業員満足度の向上を実現している。
サイボウズ株式会社
リモートワーク
サイボウズは、「100人いれば100通りのマッチング」があることを前提に、多様なメンバーが自分らしく働ける人事制度を探求しています。
リモートワークも10年以上前から導入に取り組んでおり、制度やツール整備の支援、ITへの投資を積極的に行ってきました。これまでの活動を経て整えた環境やノウハウは大切にしながら、より円滑なコミュニケーションができる体制を目指して、今後も改善を続けていきます。
リモートワーク環境手当
リモートワーク環境を整えることを目的に、勤務時間や勤務日数に関わらず1人につき月5,000円が支給されます。ただし、契約の所定労働時間が月80時間以下の場合は月2,500円です。
引用元:サイボウズ株式会社 リモートワーク
フレックスタイム制度の導入
フレックスタイム制により、働く時間を自由に選べる企業も増えている。
トヨタ自動車では、個人の生活リズムや家庭の事情に合わせた勤務時間を選べる制度を採用しており、社員が、仕事とプライベートの両方を、充実させられる環境を提供している。
トヨタ自動車株式会社
引用元:働き方・休み方改善ポータルサイト トヨタ自動車株式会社
働きがいを高める企業文化の構築
リクルートホールディングスは、社員一人ひとりが、キャリアを主体的に考えられる環境を整えるため、社内起業制度やキャリア支援プログラムを、展開している。
これにより、働くことへのモチベーションが高まり、生産性の向上につながっている。
株式会社リクルート
リクルートには、従業員が自由に手を挙げることができる、新規事業提案制度「Ring」や社内公募の異動制度「キャリアウェブ」などの機会がある。
引用元:株式会社リクルート 「やりたい」を貫いて 新規事業への挑戦や社内異動…支えてくれたのは上司たち
(2)テクノロジーの活用
民間企業は、テクノロジーを活用した効率化や地域社会に根ざした雇用創出を行いながら、人口減少問題に対応している。
地域企業の取り組み:移住支援と雇用創出
富山県の地元企業「YKKグループ」は、地域密着型の雇用創出を進めるとともに、移住者に対して、住宅補助や職場環境整備を行っている。
また、地元でのキャリア形成を支援するため、地域の学生向けに、インターンシッププログラムを提供し、地元に根付いた人材の確保を、目指している。
YKK株式会社
寮・社宅
建築物に関わるYKKグループらしく、外観のデザインが秀逸なものが多くあります。社有寮は完全個室、冷暖房完備、食事提供(食堂)があり、また、家族向けには社宅も用意しています。いずれも少ない個人負担で入居することが可能です。なお、社宅・寮とも、社有物件の無い地域においては、借上物件にて対応しています。
引用元:YKK株式会社 社員の働き方を支える福利厚生
スマートワーク環境の整備
東京のIT企業メルカリは、地方移住を希望する社員に対し、リモートワーク環境の整備を支援するプログラムを、提供している。
これにより、社員が地方で生活しながら、都会の企業で働くことを、可能にしている。
株式会社メルカリ
メルカリは、2021年9月1日よりリモート/出社の有無や働く場所など、個人と組織のパフォーマンスおよびバリューがもっとも発揮しやすいワークスタイルを自ら選択できる、「YOUR CHOICE」を導入いたしました。
「YOUR CHOICE」の導入により、現在メルカリの日本オフィスを拠点とする社員の9割※1がリモートワーク勤務を活用し、およそ1割の社員が1都3県以外の地域から勤務をしています。また、社内アンケートの結果※2によると、「YOUR CHOICE」 を通じたフルフレックス勤務制度の導入により、回答者の7割以上が日中に「中抜け」をし、約1割が休日と平日を入れ替えて働いたことがあるなど、社員がそれぞれのライフスタイルに合わせたより多様な働き方を実現していることがわかりました。さらに、アンケートに回答した社員の約9割が「YOUR CHOICE」が個人のパフォーマンスを促進していると回答し、約8割がチームのパフォーマンスを促進していると回答しています。
また、メルカリでは「YOUR CHOICE」に伴う働き方の多様化に対応し、この度東京オフィスを「Mercari Base Tokyo」として、新たにリニューアルを実施しています。
「Mercari Base Tokyo」の詳細についてはこちらをご覧ください:https://about.mercari.com/press/news/articles/20220927_mercaribasetokyo/
※1 東京オフィス、仙台オフィス、福岡オフィスのリモートワーク勤務率の平均値(2021年9月〜2022年7月)
引用元:株式会社メルカリ プレスリリース
※2 2022年5月18日〜5月24日 日本国内在住のメルカリ社員を対象にした社内アンケート(有効回答数 313名)
テクノロジーによる業務効率化
人手不足を補うため、AIやロボットを導入する企業も増加している。
例えば、物流業界では、ヤマト運輸が自動仕分けロボットを活用して、作業効率を高めており、限られた人材で対応できる仕組みを、作っている。
ヤマト運輸株式会社
物流支援ロボット(キャリロ)CarriRo@ 導入事例
引用元:株式会社ZMP 導入事例
人手不足への対応策についての成果と課題
日本における「人が足りない」の背景には、少子高齢化や人口減少があり、働き手となる若い世代が減少していることが原因と思われる。
政府や企業は、さまざまな対策を講じているが、その成果と課題は、以下の通り。
(1)女性や高齢者の活躍推進
成果:
女性が働きやすいように、育児支援や時短勤務制度も増えている。
また、高齢者が働き続けやすい環境を整えるために、定年延長やシニア向けの再雇用制度が広がっている。
これにより、職場で活躍する女性や高齢者の割合が少しずつ増えている。
課題:
女性については、育児や家事との両立が依然として大きな負担で、制度があっても利用しづらいケースが残っている。
高齢者の場合、体力やスキル面での課題があるため、全ての業務に対応できるわけではない。
(2)働き方改革
成果:
長時間労働の削減や、テレワークの推進により、仕事とプライベートのバランスを取りやすくする動きが進んでいる。
これにより、若い世代が「働きやすい職場」と感じる企業が増えた。
課題:
テレワークや柔軟な勤務形態を導入するには、企業のデジタル化や、リーダーのマネジメントスキル向上が必要である。
これが進んでいない企業も多く、格差が生まれている。
(3)外国人労働者の受け入れ拡大
成果:
特定技能制度や技能実習制度を活用して、多くの外国人労働者が日本で働くようになっている。
特に、建設や農業、介護分野では大きな助けとなっている。
課題:
言語や文化の違いから、職場でのコミュニケーションが難しい場合がある。
労働条件が適切でないケースも報告されており、制度の改善が求められている。
(4)AIやロボットの活用
成果:
人手不足が深刻な業界では、AIやロボットの導入が進んでいる。
例えば、レジの無人化や工場の自動化がその一例である。
これにより、生産性が向上し、人手の負担が軽減されている。
課題:
導入コストが高く、中小企業には負担が大きい。
ロボットができない細かい作業や、顧客とのコミュニケーションは人の力が必要であり、完全に代替することは難しい。
(5)取り組みが抱える問題点(コスト、法整備、社会的な受容性の課題)
一方で、課題もある。
特に、テクノロジー導入の初期費用や、リモートワーク環境整備にかかるコスト負担が、中小企業には大きな壁となっている。
人手不足は、すぐに解決できる問題ではないが、我々が新しいアイデアを提案したり、職場の働きやすさを改善したりすることで、少しずつ状況を良くすることはできるはずだ。
我々一人ひとりが協力し、働きやすい環境を作ることが大切である。
そして、働き甲斐のある企業文化を構築するには、経営者の意識改革も必要である。
まとめ
日本は、急速な人口減少と、少子高齢化という、未曾有の課題に直面している。
「人が足りない」という問題は、経済の停滞、地域社会の衰退、医療や介護の危機など、社会全体に、大きな影響を及ぼしている。
この困難に対して、国(政府)と民間が、それぞれ取り組みを進めているが、その道のりは決して平坦ではない。
挑戦だ。
政府は、人口減少による労働力不足に対応するため、多方面で施策を展開している。
女性と高齢者の労働参加促進は、その一例だ。
保育所の充実や、長時間労働の見直しにより、女性がキャリアを追求しやすい環境を整え、高齢者には、定年延長や、再雇用制度の活用を、促進している。
また、外国人労働者の受け入れでは、技能実習制度や特定技能制度を通じて、地域や産業の人材不足を、補おうとしている。
さらに、AIやロボット技術、自動運転技術の導入を支援し、デジタル化・自動化を推進することで、社会全体の生産性を、向上させる取り組みも、進んでいる。
一方、民間企業では、政府の支援を活用しながら、独自の取り組みを展開している。
例えば、働き方改革では、テレワークやフレックスタイム制を導入し、多様な人材が働きやすい環境を整備している。
また、地域密着型の雇用創出や、移住者支援による地方の活性化、さらには、リモートワーク環境の整備を進める企業も、増えている。
これにより、地方から都市への一極集中を是正し、地域社会の持続可能性を高める努力が、行われている。
これらの取り組みには、一定の成果が見られるものの、多くの課題も残されている。
女性や高齢者の賃金が、現役世代より低い問題、外国人労働者の地域社会との調和の難しさ、デジタル化の進展の遅れなどが、その例だ。
また、地方創生とスマートシティー化の推進が、矛盾をはらむケースもあり、政策の一貫性や柔軟性が、求められている。
これからの日本が、人口減少時代を乗り越えるには、国(政府)と民間が互いに連携し、より具体的で、実効性のある施策を、実行していく必要がある。
その鍵となるのは、新しい発想と、挑戦する姿勢である。
社会全体が協力し、柔軟に対応することで、より良い未来を、築くことができるに違いない。
我々は、これらの取り組みを知ることで、人口減少という課題にどう向き合い、自分たちがどのような役割を果たせるかを、考えていかなければならない。
日本の未来を創るのは、社会に係る全ての人々であり、我々一人ひとりの力なのである。