「令和の米騒動」と騒がれているが、皆さんも「米」を探し求めている人の、1人ですか?
皆さんも知っての通り、日本人は「米」をあまり食べなくなってきている。
どれだけかと言えば、国民1人が1年間に食べている「米」の消費量は、62年前の1962年の「118.3kg/人・年」がピークとなっていて、それから年々減少し、2022年現在の消費量は、「50.7kg/人・年」とおよそ半減しているとのこと。
一般的に日本人の「米」消費が減少している理由は、「食生活の多様化」「少子高齢化」「世帯構造の変化」など、さまざまな要因が挙げられていて、これからもさらに加速していくと考えられている。
それなのに、いまさら、なぜ「米が店頭に無い。米が不足している。」と言って騒がれているのだろうか?
報道されていない視点から、日本人の消費行動をもとに、ひも解いて見たい。
日本人の「米」の消費動向:どんな米を食べているのか?
農林水産省の調査に『米の消費動向調査結果』というものがあり、令和5年(2023年)12月に報告されているものがあるので参考に見てみたい。
1.1人1ヶ月当たり精米消費量
出典元:米穀安定供給確保支援機構 米の消費動向調査結果(令和5年11月分)
ここでは、1人が1ヶ月当たり精米されている米をどの位食べられているかを求めており、その結果は、「4,940g/人・月」となっており1日当たりに換算すると、「およそ4,940g÷30≒164.7g/人・日」で、お茶碗で2杯程度となる。
個人的な印象としては、意外と食べていると感じた。
2.精米購入・入手経路 (購入人数割合(複数回答))
引用元:米穀安定供給確保支援機構 米の消費動向調査結果(令和5年11月分)
精米購入・入手経路は、「スーパーマーケット」46.6%、「家族・知人などから無償で入手」18.9%、「インターネットショップ」9.3%の順番となっている。
我が家では、生産者から直接購入しているので、比較的安価で良い米が手にはいるが、一般消費者の半数近くは、スーパーマーケットとやディスカウントストアから購入していることから、安価な価格帯の米を求めていることが想像される。
3.精米購入経路別の購入単価 (複数回答)
引用元:米穀安定供給確保支援機構 米の消費動向調査結果(令和5年11月分)
精米購入・入手経路で一番多かった「スーパーマーケット(46.6%)」においては、米の価格は「383円/kg」となっていることから、日本の一般家庭で購入されている「米」は、比較的安い価格帯の「米」という事になる。
「等級」は1等又は2等、「食味ランク」はA以下の「単一銘柄米(産地・品種・年産が単一のもの)」や「ブレンド米」が想像される。
4.家庭内の月末在庫数量
引用元:米穀安定供給確保支援機構 米の消費動向調査結果(令和5年11月分)
家庭内の月末在庫数量は、「 6.0kg」となっており、およそ1人分の1ヶ月分であることから、災害を意識して、貯蔵はしてはいないと思われる。
我が家でも、「米」は重いし、買いに行くのが面倒なので、5kgの物を1袋買っておこうかぐらいの意識しかない。
日本人の一般的な米の購入・消費に関する特徴:米の等級や食味ランキングは気にしない。
日本人の米に関する消費動向は、近年の食生活の変化や市場の多様化に伴い、少しずつ変化していて、日本人の一般的な米の購入・消費に関する特徴は以下の通り。
1. どんな米を買うか
- 人気銘柄米:高所得層の家庭では、「コシヒカリ」や「あきたこまち」「ひとめぼれ」など、特定のブランド米を好む傾向がある。特に「コシヒカリ」は安定した品質と味から全国的に高い支持を集めている。
- 新米志向:多くの家庭では、新米(秋に収穫された新鮮な米)を好む傾向があり、収穫時期には新米を購入する消費者が増加する。新米は香りと粘りが良く、特に高価格帯でも人気がある。
- ブレンド米も利用される:一般の家庭では、価格を抑えるために、複数の銘柄をブレンドした「ブレンド米」も需要があり、特に大手スーパーや業務用には、このタイプの米が多く使われる。
※「ブレンド米」とは、銘柄、産地、産年が異なる複数の米をブレンドした米で、正式には「複数原料米」と呼ばれる。
「ブレンド米」については、以下の記事で記載しているので、そちらも参考にしてみてください。
2. どこから買うか
- スーパーマーケット:家庭用の米のほとんどは、「スーパーマーケット」や「ディスカウントストア」で購入される。大型のスーパーチェーンは、特売やポイント制度を活用し、定期的に米を購入する家庭が多い。
- オンラインショッピング:近年、特にコロナ禍以降、「Amazon」や「楽天市場」などのオンラインショップでの米の購入も増加している。産地直送の新鮮な米や、有機栽培米、特定銘柄米など、選択肢が広がっている。
- 農家直売や道の駅:特に地方では、農家から直接購入する人もいる。直売所や道の駅で地元産の米を買うことで、安心感や地産地消を重視する消費者もいる。
3. 価格帯
- 一般的な価格:一般的なスーパーマーケットでは、5kgあたり1,500〜3,000円の価格帯の米が多く売られている。品質や銘柄によって、価格は変動するが、家庭での毎日の消費にはこの価格帯がよく選ばれる。
- 10kgだと、3,000〜5,000円程度の価格が一般的である。(300~500円/kg)
- 高級米:高品質の銘柄米や有機栽培、特定地域のブランド米は、5kgで3,000円以上(600円以上/kg)の価格が付くことがある。特にギフト用途や特別な食事向けに高価格帯の米を選ぶ人も増えている。
- 業務用米やブレンド米:外食産業や大規模調理用には、10kgで2,000円前後(200円/kg)のブレンド米が選ばれることが多い。
4. 米の消費量
- 1人あたりの年間消費量:近年、日本人の1人あたりの米の年間消費量は、減少している。2022年のデータでは、1人あたり年間約50.7kgで、昔に比べるとかなり減少している(例えば、1960年代には1人あたり年間約118.3kg消費していた)。
- 家庭の消費量:一般的な家庭では、家族構成や食生活によるが、月に10kg前後の米を消費することが多い。大家族や米を多く食べる家庭では、15kg以上を月に消費する場合もある。
5. 消費動向の変化
- 健康志向の増加:最近では、白米に代わり玄米や発芽玄米、雑穀米など、健康志向の高い米を選ぶ人が増えている。これらは食物繊維や栄養価が高いことが特徴である。
- 外食や中食の増加:家庭での米の消費量が減少する一方で、外食産業やお弁当などの中食で米を食べる機会が増えている。おにぎりや弁当向けの米には、冷めても美味しい「ななつぼし」などが人気である。
「米」の価格を左右する2つの要素:「等級」と「食味ランキング」
日本の米の価格に大きな影響を与える要素として「等級」と「食味ランキング」があり、これらは米の品質を評価する重要な基準で、価格に直接影響する。
それぞれの詳細と、価格への影響については、以下の通り。
1. 【等級】(農産物規格)
「等級」は、農林水産省が定める米の品質規格で、収穫後の米の外観や形状によって決まる。
これは、農産物検査法に基づいて行われ、検査は、米が収穫された後、保管前に「玄米」の状態で行われ、主に目視で判定し、米の大きさ、形状、欠けや割れ、異物の混入などを目視で判定し、格付けしているそう。
また、保管の際に重要なお米の「水分量」については、機械で測定し、15%以下に抑えられているかどうかがチェックされているとのこと。
【等級】の種類
引用元:農林水産省 玄米の検査規格
- 1等米:最も品質が高い等級。形状が整っており、色、つや、粒の大きさが均一で異物も少ない。
- 2等米:1等米に次ぐ品質。少し粒が小さい、または多少の欠けがあるが、食味にはほぼ影響しない。
- 3等米:品質が劣り、形状に欠陥が多く、粒が割れていたり、変色が見られることがある。
米の等級印
引用元:神明食堂 【知っておきたいお米知識】 よく聞くお米の等級と食味ランキングの違い
【等級】が価格に与える影響
- 1等米:最も価格が高く、スーパーマーケットで販売される銘柄米や高級店で扱われることが多い。特に特定の銘柄米では、1等米のほうが2等米と比べて価格が数百円から1,000円程度高くなる場合がある(5kg当たり)。
- 2等米:1等米と比べると価格は若干安くなるが、特に日常的に購入される範囲では、大きな違いはない場合も多い。
- 3等米:食味や品質にこだわらない場合には安価で購入できるが、通常、家庭用の一般市場にはあまり流通していない。
2. 【食味ランキング】(日本穀物検定協会)
「食味ランキング」は、日本穀物検定協会によって毎年実施される試食による米の評価で、『食味(外観、香り、味、粘り、硬さ、総合的な評価)』が基準となるそう。
食味ランキングは、米の品質を消費者目線で評価したものとして、非常に重要とのこと。
【食味ランキング】の評価基準
米の食味ランキングは、炊飯した白飯を試食して評価する食味官能試験に基づき、昭和46年産米から毎年全国規模の産地品種について実施しています。
引用元:一般財団法人 日本穀物検定協会 ランキング試験
食味試験のランクは、複数産地のコシヒカリのブレンド米を基準米とし、これと試験対象産地品種を比較しておおむね同等のものを「A’」、基準米よりも特に良好なものを「特A」、良好なものを「A」、やや劣るものを「B」、劣るものを「B’」として評価を行い、この結果を毎年食味ランキングとして取りまとめ、発表しています。
- 特A:基準米より特に良好なもの(最高評価。食味が非常に優れた米。)
- A:基準米より良好なもの(良好な評価。大半の家庭でおいしく食べられる品質。)
- A’:基準米と同等なもの(Aよりもやや劣るが、十分においしい。)
- B:基準米よりやや劣るもの(平均的な味わいで、特別優れた点はないが、普通に食べられる。)
- B’:基準米より劣るもの(食味がBよりも劣るが、消費可能。)
特Aランクの産地と品種
引用元:一般財団法人 日本穀物検定協会 ランク別表
【食味ランキング】が価格に与える影響
- 特Aランク米:最高評価の米は、特に消費者やレストラン、ギフト向けに高く評価されるため、価格が高くなる。5kgで通常のAランク米と比べて1,000〜2,000円程度高い場合がある。特A評価を何年も継続して受けているブランド米(例:新潟産コシヒカリ)は特に人気がある。
- Aランク米:多くの一般家庭で消費されるのがこのレベルである。味や価格のバランスが取れており、日常的な食卓に適している。
- Bランク以下の米:食味ランキングの評価が低い場合、価格も抑えられることが多い。ただし、地域や栽培条件による影響が大きいことから、Bランクでも家庭の好み次第では、価格以上の価値を感じることもある。
3. 「等級」と「食味ランキング」の違いによる価格への影響
- 等級は米の外見的な品質(粒の大きさや整い具合)を評価する一方で、食味ランキングは実際の味や食感の評価に重点を置いている。
- 1等米かつ特Aランクの米は、最も高価格で流通し、高級スーパーやギフト用に多く使われる。
- 2等米でも特Aランクの場合、価格は高くなることがある。味が良ければ、外見の欠点を補う形で需要がある。
- 1等米だが食味が低評価の場合、外見は良いが、味がそれほどでもないとされ、一般的な価格で販売される。
- 3等米かつ低食味ランクの場合、業務用や加工用として流通し、価格は最も低く抑えられる。
【米の等級と食味ランキング】は、消費動向に関係はあるのか?:まとめ
ここでは、米の価格は「等級」と「食味ランキング」によって、大きく左右される事が理解できた。
「等級」は、見た目の品質に基づき、「食味ランキング」は、実際の味わいに基づいて評価されていることもわかった。
高級米市場では、1等米で特Aランクを持つ米が最も高価で評価されていて、消費者の好みやニーズに応じては、2等米やAランクの米でも十分な需要がある。
また、「ブレンド米」と呼ばれる、銘柄、産地、産年が異なる複数の米をブレンドした米の需要も、かなり大きいようだ。
この様に、一般消費者は、「産地」や「銘柄」、「価格」は重視するが、「等級」と「食味ランキング」は、ほとんど気にしてない様におもわれる。
「食味ランキング」が高い米ほど価格が高騰する傾向だが、吾輩の様な一般庶民にとっての日常使いの米は、有名産地の高価な良い米よりも、価格重視の、低価格で、そこそこ旨い、「価格と品質のバランスの取れた米」が求められている。
スーパーマーケットやディスカウントストアに「米」が無いところを見ると、一般庶民は、やはり低価格帯の米を求めている。
これから増々、物価も高騰することから、新米や高価な「ブランド米」には手が届かない日々が続く事が容易に想像できる。
近い将来、ブランドの日本産の米は、高値で輸出し、日本人が食べるのは「安価な輸入米」、というような日が来ない事を祈るばかりだ。