仕事は、必ず誰かと何らかのコミュニケーションをとって活動している。
仕事の仲間(上司や部下)や取引先の担当者など、何か仕事を成し遂げようとすると必ずコミュニケーションが必要になってくる。ほとんどの場合「人との会話」だろう。
ここでは、仕事の場合について中心に考えてみたい。皆さんどうだろう。上司や部下がどんな性格で、何が得意で何が不得意か、そんなことが分かれば、どれほど仕事がし易いかと感じた事は無いだろうか?
よく耳にする言葉に、○○さんと△△さんは仲が悪くて「馬が合わない」などという言葉がある。
これはまさに、相手の特徴を知らないがために起きる事態だ。会社組織にとっても2人にとっても不幸な事だ。
ここでは、そんな不幸な思考や感情を減らすための「脳の仕組みや対処法」について考えてみたい。
脳の傾向について
脳を知ることは自分を知ること言ってもいいだろう。より身近な家庭の事であったり、会社や仕事のことであっても、より豊かな人生とするのはまず最初に、「自分を知る」ことではないだろうか。
人は脳で「思考」し「行動」する生き物だ。脳が人生を創造している。ということは、人生をより良い方向に向かわせるためには、「脳を知る」ことが一番重要であり、人生の創造は「脳を知る」ことが第一歩ということだ。
「自分の脳を知る」ということは「自分を理解する」ということであり、そこから自分の能力(可能性)を生かす方向や場が見えてくる。
そして、特に我々に欠けているのは「人の脳を知る」ということ。他人の脳の事など考えたこともないのが一般的だろう。
しかし「人の脳を知る」ということは「人を理解する」ということでもあり、人の能力を引き出してあげたり、人との良好な関係性を築くための効果的な方法であったりするのだ。
利き脳
利き手、利き足はよく耳にしたことがあると思うが、人には利き脳があることを知っているだろうか?
利き脳とは、その人の脳の得意分野のことで、脳の使い方のクセ=利き脳と言われている。
皆さんは、字を書く時や箸を持つ時、ボールを蹴ったりする時など、右利きですか?左利きですか?
利き手、利き足のように、人間は「左右のどちらかが優位になりやすい」という特徴がある。(人間どちらも使えるので、あくまでも優位になりやすいということ。)
人間には左脳と右脳があり、誰しも両方の脳を使っているが、左脳と右脳で優位になりやすい脳がある。行動コミュニケーション学では「利き脳」という言葉を使っているとのこと。
間違えないでほしいが、これは、優劣・正誤・良し悪しという評価では決してないという事。
この様に、脳は行動や思考を司っていて、人の脳の傾向に合わせた付き合い方が出来れば、仕事はより楽にできるし、成果もあげ易くなるのではないだろうか。
左脳の役割
左脳の得意分野、機能分担は以下の通り。
話す
書く
分析力
論理的
科学的思考
推論
言語認識
数学理解力
計算
右脳の役割
右脳の得意分野、機能分担は以下の通り。
ひらめき
直感
創造性
芸術性
空間的
イメージ記憶
全体を見る力
同時的情報処理
図形を読みとる
利き脳で分ける4つのタイプ
人間の思考パターンを4つに分けることが出来る。
人間の脳内では、インプット(情報を仕入れて処理)し、アウトプット(言葉で表現したり行動したり)する、という働きを繰り返している。
この様に脳は、すべての処理を行っているので、効率的に素早く判断するための何か、人それぞれ何らかの判断基準(規則性や好き嫌い)をもって判断していることになる。つまり「くせ」があるということだろう。
そして、このインプット・アウトプットで、左脳優位か右脳優位かが分かれるのだ。
インプット(①)する時に、左脳優位(A)か、右脳優位(B)の2パターンがある。
アウトプット(②)する時も、左脳優位(A)か、右脳優位(B)の2パターンがある。
というわけで、以下の組み合わせがある。
インプット(①)×アウトプット(②)=?
A×A=左脳×左脳
B×A=右脳×左脳
B×B=右脳×右脳
A×B=左脳×右脳
という、4つの思考パターンになる。
この4つの思考を、行動コミュニケーション学では下記のような名称で呼んでいるそうで、
先ほどの式に当てはめてみると以下の通り。
インプット(①)×アウトプット(②)=?
A×A=左脳×左脳=“誠”タイプ
B×A=右脳×左脳=”礼”タイプ
B×B=右脳×右脳=”義”タイプ
A×B=左脳×右脳=”勇”タイプ
この【誠・礼・義・勇】というのは、行動コミュニケーション学が新渡戸稲造の『武士道』の考え方を背景に持つことから、このように呼んでいるとのこと。
これは、血液占いや星座占いなどの占いではない。人間の脳の特性なので誰しもがこの4つの傾向にあてはまるのだ。
利き脳の確認の方法
自分がどの思考タイプかを調べる方法は、すごくシンプルで、簡単。
手の組み方と腕の組み方を使い判定する。
①まず手だが、こちらはインプットを表し、左右どちらの親指が下になるかだ。
左親指が下ならば「左脳」タイプ、右親指が下ならば「右脳」タイプとなる。
②次に腕だが、こちらはアウトプットを表し、左右どちらの腕が下になるかだ。
左腕が下ならば「左脳」タイプ、右腕が下ならば「右脳」タイプとなる。
ここでは、人間を4つに分類することが目的ではなく、体系的に4つに分けて考えることで、自分と他者の違いを理解し、その上で支えあうことを目指しているのだ。
【勇】タイプ
左脳インプット(論理的)
右脳アウトプット(イメージ)
傾向
・やったことが無い事でも勇猛果敢に挑戦する
(例:面白そうそれやろう。とりあえずやろう。など)
・眼の前の困難やアクシデントに強い
(例:計画性が無いので困難が当たり前にやってくる。アクシデントは当たり前。困難に慣れている。)
・挑戦や行動で成長する事に喜びを感じる
コミュニケーション特性
・擬音語など抽象的な言語で勢いと活力を与える
(例:いいからドーンと行こう。ワーと盛り上がろう。など)
・お互いの考えを共有するための双方向の会話を大切にする
(例:俺はこう思うけど、君はどう思う?など)
・相手のベストを引き出す為、積極的な行動を相手に求める
(例:まずはやってみたら?やってみないとわからないから、まずはやってみたら?など)
可能性の定義
どの位の可能性を感じたら行動するか?
1%でも可能性を感じたら行動する。
(例:良いからやろう。やってから考えよう。何とかなるよ。など)
革新 イノベーションを起こすタイプ
【義】タイプ
右脳インプット(イメージ)
右脳アウトプット(イメージ)
傾向
・義や志を重んじる
・不道徳を嫌い、人や社会の為に一貫した行動をとる
・人として正しい行動を選択する
(例:上司がちょっとでも辻褄が合わないことをすると信頼をなくす)
コミュニケーション特性
・場になじめていない人に特に声をかける。
(例:だいじょうぶ?なじめてる?など)
・全体の雰囲気を重視。円滑なやり取りを促進する。
(例:場の雰囲気を壊したくない。)
・一人一人が気づきを得られるよう場をリードする。
可能性の定義
どの位の可能性を感じたら行動するか?
0% か 100%
(例:通常は100%でないと行動しないが、自分がそのことに意義を感じると可能性が無くても突っ走る。など)
「部下を守るため。」などスイッチが入った時に行動する。義理人情の人。
【誠】タイプ
左脳インプット(論理的)
左脳アウトプット(論理的)
傾向
・言ったことを確実に達成する言行一致型。
・ルールや手順にこだわりを持ち、正確に任務を遂行する。
・計画的に実行するので周りからの信頼をえられる。
コミュニケーション特性
・コンサルタントの様に正確な発言をする。
(例:理路整然と話し、訳が分からないことは言わない。)
・達成に必要な数値目標や手順を把握する。
(例:数値目標があった方が行動的になる。曖昧だとどうしていいか分からない。)
・事実を正確に知るための質問をする。
(例:どうだったの?思った事ではなく、実際に起こったことを求める。)
可能性の定義
どの位の可能性を感じたら行動するか?
70%~80%
慎重な性格。事前の立案の段階で、これくらいの可能性を見出して行動に起こす。成果を上げるのが得意だが、目標が達成できないと鬱になることもある。
【礼】タイプ
右脳インプット(イメージ)
左脳アウトプット(論理的)
傾向
・礼節を持って関係を築く。
・互いに尊敬しあえる関係性を重要視する。
・相手に尽くし一体感のある人間関係に喜びを感じる
(例:自分から働きかけて、一体感が生まれチームワークが良くなることに良かったと感じる。誰かが一人だけうまくいっているのは良しとしない。チームワーク重視。)
コミュニケーション特性
・教えることが得意で相手の為になる事を話す。
(例:トレーニングが上手)
・相手を知るために過去について多くの質問をする。
(例:この前はどうだったの?学生時代は何やっていたの?)
・礼節を持って関係を築こうとする。
(例:いつも気を使っている。)
可能性の定義
どの位の可能性を感じたら行動するか?
50%くらい
本心では、断言をしないでその場の雰囲気でどちらでも行ける状態が心地よい。目標達成よりもチームワークを重要視するので、結果を求めチームが崩れるのを嫌い、調和を大切にする。
まとめ
この診断結果は、あくまでも一人ひとりの思考特性(特徴)を示したもので「勇タイプが義タイプより優れている」とか、「誠タイプの方が礼タイプよりも能力的に優れている」ということは決してない。
どのタイプが良いかとか優れているとかではないし、ましてや人間性を否定するものなどではない。
これは、ビジネスにあてはめやすいので活用してもらいたいが、コミュニケーションでは自分のタイプを知り、相手のタイプを知ることが大事だという事。
そして、結果を出すためのプロセスにそれぞれ傾向があり、誰かが正しいのではなく皆が正しく、組織はこれらの特徴を持った人たちがうまく機能することで、会社の目標を達成することが出来る。
人の特徴は欠点では無い。欠点だと捉えると、イライラして関係性が悪くなってしまう。お互いにその特徴を知り、その特徴を生かし補い合うことで、組織はうまく機能し目標を達成できる。
ここで重要なのは、自分の脳の特性を知ることが目的ではなく、自分の脳の特性を知って、さらに相手(部下や上司など)の脳の特徴を知り、違いを理解してコミュニケーションを図ることが大事ということ。ここを間違えないでほしい。