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【静岡県のリニア中央新幹線について】問題点とは何なのか?

リニア中央新幹線 ニュース

皆さんは「リニア中央新幹線」とはどんなものか、知っているだろうか?

吾輩は、昭和38年(1963年)生れなので、ときおりニュースで「リニアモーターカーの実験線で超電導で車体の浮上に成功した」とか、「最高速度が500km/hを達成した」とか、「有人で走行した」とか、「工事が着工した」などについては、過去に見聞きしていた。

しかし、最近は、工事に反対しているとか、工事が間に合わないなどのニュースが多くなったように思われる。

いったい何が起こっているのか?何が問題なのか?などについて、見ていきたいと思う。

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リニア中央新幹線とは

リニア中央新幹線は、1973年11月15日に中央新幹線の「基本計画」が決定され、全国新幹線鉄道整備法に基づき計画された、東京都品川駅を起点、大阪府新大阪駅を終点とする新幹線鉄道である。

これは、平成23年(2011年)5月、東日本大震災の2か月後に決定された「整備計画」において、走行方式は「超電導磁気浮上方式(超電導リニア)」とし、最高速度は505km/hとすることが定められており、東京大阪(約438km)を約1時間(現在の新幹線の2倍のスピード)で結ぶ計画である。

このリニア中央新幹線の整備は、2段階で行われ、「東京都品川~愛知県名古屋間」が令和9年(2027年)に開業予定で、「愛知県名古屋駅~大阪府新大阪駅間」は、令和9年(2027年)から更に18年後の令和27年(2045年)に開業予定だそう。

現在の段階では、京都府京都市を通らないルートで計画されているようだが、愛知県名古屋駅~大阪府新大阪駅間の開業時期については、国の「財政投融資」を活用することで最大で8年間前倒しされれば、令和19年(2037年)に開業する方向で、現在、国とJR東海との間で調整が進められているとのこと。

リニア中央新幹線 これまでの経緯

昭和48年(1973年)11月
「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を決める基本計画」の決定
(起点:東京都 終点:大阪市 主要な経過地:甲府市附近、名古屋市附近、奈良市附近)
時速250kmの新幹線を前提とした、東海道新幹線の老朽化や事故に備えた代替ルート

昭和62年(1987年)6月
第四次全国総合開発計画において、基本計画路線の中で唯一「リニアモーターカー方式」とされる。

平成元年(1989年)12月
平成2年政府予算案で、上記ルートの先行区間としてリニア山梨実験線を承認
東海道新幹線の「代替ルート」から、リニアによる「新たな国土軸」に変更
→ リニアによる整備を前提とするならば、ルートの再検証が必要

平成2年(1990年)11月
リニア山梨実験線の工事着手

平成9年(1997年)4月
リニア山梨実験線での走行試験が開始

平成19年(2007年)12月
JR東海が、全額自己資金で建設する旨を発表

平成22年(2010年)2月
決定から38年が経過した「基本計画」を前提とし、国土交通大臣が交通政策審議会に「整備計画」について審議を諮問

平成22年(2010年)4月
JR東海が、名古屋市までを令和9年(2027年)に、大阪市までを令和27年(2045年)に開業すると発表

平成23年(2011年)5月
昭和48年の「基本計画」を踏襲する形で国が「整備計画」を決定(主要な経過地:奈良市附近のまま)

平成23年(2011年)11月
JR東海が、中間駅を負担することを発表

平成26年(2014年)6月
「経済財政運営と改革の基本方針2014」(いわゆる「骨太の方針」)に、リニア中央新幹線に係る早期整備の記述が掲載

平成26年(2014年)12月
JR東海が、品川・名古屋間のリニア建設工事に着手(令和9年(2027年)開業予定)

平成27年(2015年)6月
「経済財政運営と改革の基本方針2015」(いわゆる「骨太の方針」)に、リニア中央新幹線に係る早期整備の記述が掲載

平成28年(2016年)6月
「経済財政運営と改革の基本方針2016」(いわゆる「骨太の方針」)に、リニア中央新幹線の整備促進のため、財政投融資の活用等を検討する旨が明記

平成28年(2016年)8月
「未来への投資を実現する経済対策」に、財政投融資を活用した、「リニア中央新幹線全線開業の最大8年間前倒し」と「整備新幹線の建設の加速化」が盛り込まれる。

引用元:京都府リニア中央新幹線推進協議会【リニア新幹線 これまでの経緯】

リニア中央新幹線のルート

リニア中央新幹線は、平成23年(2011年)5月に、全国新幹線鉄道整備法に基づく「整備計画」が決定され、東京都・品川駅を起点とし愛知県・名古屋駅を経由して、大阪府新大阪駅を結ぶリニアモーターカーによる新幹線計画で、時速500km/hで走行する超電導磁気浮上式鉄道(超電導リニア)を導入により、品川駅~新大阪駅間を約67分で結ぶ計画だ。

運行ルートは、神奈川県相模原市、山梨県山梨リニア実験線、山梨県甲府市附近、静岡県赤石山脈(南アルプス)中南部、長野県飯田市、岐阜県中津川市、愛知県名古屋市附近及び奈良県奈良市附近を経て、大阪府大阪市を終点とする「延長約438km」だ。

東京都の品川駅~愛知県名古屋駅間が現在建設中で、開業予定は2027年とされてきたが、諸事情により実際には2030年代半ばになりだとの事。

名古屋駅~新大阪駅間の開業時期については、詳細なルートや着工予定は決まっておらず、開業予定時期についても未定だとの事。

以下は、リニア中央新幹線の運行ルートの概要図なので、参考にしてほしい。

引用元:神奈川県ホームページ リニア中央新幹線の概要

静岡県が抱いている懸念

JR東海は、2023年12月14日に、リニア新幹線の工事実施計画について、リニア中央新幹線の品川駅~名古屋駅間の開業目標について、静岡工区の着工の見通しが立たないとして、これまでの「2027年」から「2027年以降」へ変更する旨を申請していた。

国土交通省は、2023年12月28日付けで、リニア新幹線の工事について、JR東海が申請した品川駅~名古屋駅間の開業目標を「2027年以降」とする実施計画の変更を認可したと報じられた。

ここで気になるのは、「なぜ静岡工区の着工の見通しが立たないのか?」という事だ。

静岡工区

静岡工区とはどの場所かというと、静岡県最北部の秘境の地であり、大井川の源流部で、下の「南アルプストンネル断面図」にある様に、品川駅から名古屋駅間の延長285.6kmのうち、南アルプストンネル25kmの、静岡工区「8.9km」の部分だ。

引用元:国土交通省 第1回リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議 配布資料 リニア中央新幹線の概要

静岡県がJR東海に求める課題とは

昔から東京、名古屋、大阪、広島、福岡を通る一連の路線は、日本の人口が集中している地域であり、経済、文化圏の中心であるため、あらゆるインフラは東海道、山陽道を中心に集中的に投資されてきている。

リニア中央新幹線をめぐっては、「静岡県とJR東海との溝が埋まらない」などと報道されているが、吾輩は恩恵を受ける地域の住人ではないので、あまりピンと来ていないのが現状だ。

いったい何をもめているのだろうか?

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静岡県が求める課題とは何か?

静岡県は2019年に、「引き続き対話を要する事項」として、発生土の対策や沢の流量変化など、47項目の懸念を示した「確認書」をJR東海に提出した。

静岡県は、有識者らがJR東海と技術課題を議論する「専門部会」を2019年に立ち上げて、次の項目について議論を進めてきた。

(1)大井川の水量問題
(2)水生生物などへの影響
(3)トンネル掘削で発生する土砂の管理

この3点を柱として、47項目の技術課題を挙げ議論を続けてきたが、解決の糸口が見えることはなく、国の有識者会議も議論を終え、すでに報告書が提出されているという。

報告書は、以下の参考資料を参考にしてほしい。

参考資料:リニア中央新幹線静岡工区に関する報告書(令和5年報告)~環境保全に関する検討~

リニア問題の発端

川勝平太知事がリニア中央新幹線について初めて自身の立場を表明したのは2017年10月の定例記者会見でのことだった。静岡県は同年4月、JR東海に対して静岡工区のトンネル工事で出た湧水全量を大井川に戻すよう求める意見書を提出していた。このときJR東海は、大井川流域の利水者と協定を結ぶための交渉を続けていたが、この時のJR東海の地元利水者に対する態度を聞いた川勝知事は、大井川の水は「一部戻してやるから、ともかく工事をさせろという極めて傲慢な態度で臨んでいる」とJR東海に対して強い不満を述べたことも、その後の「大井川水問題」騒動の発端となった。

引用元:情報が溢れすぎていてよく分からない!? 静岡リニア問題を初心者向けにわかりやすく解説

ここで出てくるのが 「大井川の水」という文言だ。

この「大井川の水」などがもたらす、影響に注目して少し詳しく見ていこう。

(1)大井川の水量問題

静岡県の工区は、山の表面から最大で1400mの深さの場所を貫く、最難関の1つとされる南アルプストンネルの工事であり、静岡県は、工事による大量の湧水が県外(山梨県と長野県)に流失することにより、「南アルプスの生態系への影響」や「大井川の水量減少」を懸念している。

事実大井川は、上流は水力発電、中下流域では約62万人の水道水、農業や工業の用水として活用されており、水不足もたびたび発生している。

また、川から浄水場に送る水の量を減らす「取水制限」は、直近5年間で7回もあったという事から、工事期間中の湧き水の他県への流出には敏感だという。

(2)水生生物などへの影響

JR東海は、南アルプスのトンネル掘削により、トンネル付近の地下水が300メートル以上低下するという解析結果を示しており、これに対して静岡県は、南アルプスは絶滅の恐れがある高山植物のタカネマンテマや淡水魚のヤマトイワナ、ライチョウなどが生息していることから、南アルプス独特の生物多様性への影響の恐れを訴えてる。

南アルプスの自然保護地域は、国立公園によって保護されているが、その地域は意外と狭く、山梨県側を除くと稜線の一部地域だけに限られている。

(3)トンネル掘削で発生する土砂の管理

南アルプストンネルは、国立公園に指定された地域をトンネルで通過するので、地上で改変を行うことはないが、トンネル工事では、掘削により370万立法メートルの残土が発生する。

このうち、最大の残土置き場となる燕沢付近では18ヘクタールの面積に65メートルの高さで盛り土する計画となっている(駿府城公園の広さ・16階建ての県庁東館の高さ)ため、静岡県は18ヘクタールの土地改変による「生態系への影響」「盛り土の安全性」「自然由来の重金属などを含む発生土の水質への影響」について、懸念を示している。

現在(2019年2月)のところ、静岡県内での発生土置場として、大井川沿いの7地点が候補地となっており、そのうち4候補地内には奥大井県立自然公園第3種特別地域に指定された土地が含まれているので、特別地域内で改変して盛土する場合は、「静岡県立自然公園条例」に基づき、県知事の許可を得る必要がある。

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どうして県知事の合意が必要なのか

2014年10月17日、当時の太田昭宏国土交通相は、JR東海が申請していた東京都品川駅~愛知県名古屋駅間のリニア中央新幹線の工事実施計画を認可しており、JR東海はこの認可を受け、沿線住民への説明会や用地買収に着手した。

すべての事業費は、JR東海が負担することになっている。

認可を受けた当初より、工事で発生する残土の処理方法や河川流量の減少をめぐっては、沿線の自治体や住民の懸念は示されており、太田国交相は「工事の実施状況を注視し、必要な措置が講じられるよう指導していく」とし、JR東海に対しては「地元への不安払拭に努めるよう求める」考えを示していた。

この様に国は、JR東海のリニア建設に際して、「自治体と連携して適切な環境保全措置を講じるよう求めている」ため、県が工事の認可権限を有するわけではないが、静岡県の合意なしにはトンネル工事が始められないようになっている。

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今後の展開

2017年以降、川勝平太・静岡県知事が「トンネル工事で大井川の水資源が大量に失われ、流域自治体や利水者の理解が得られない」として、大井川の水量減少を懸念してトンネル工事を認めない姿勢を見せて以来、工事は停滞したままだ。

2024年2月5日、リニア問題を担当する静岡県の森副知事が会見で、静岡県が2019年に「引き続き対話を要する事項」として発生土の対策や沢の流量変化など、47項目の懸念を示した確認書をJR東海に示しいたが、その懸念について「30項目について対話が終わっていない」と協議の継続を求めている。

2024年4月には、「JR東海が2027年開業が間に合わないことを正式に認め」ており、JR東海の丹羽俊介社長は、「開業予定時期の見通しをお示しする予定は現時点でありません」とし、JR東海は、工期の見通しが立った段階で、改めて工事完了時期の変更の申請をする予定だとの事。

これまでにない難工事とされるリニア中央新幹線工事だが、既に工事事故などが発生しており、工事の中断などにより、静岡県以外でも工事の遅れが生じているのが現状だ。

例をあげれば、2021年10月には、岐阜県中津川市のトンネル工事現場で、火薬で掘り進める途中、岩肌が崩れ落ちて作業員2人が死傷しているほか、2016年に着工した名古屋市中区にある名城非常口は、底部からの湧水や土壌汚染があり、完成が予定より遅れている。

山梨県南アルプス市では、ルート予定地の住民による差し止め訴訟も起きており、山梨県南アルプス市の住民が甲府地裁に起こした訴訟は、2024年5月に判決が出るようだが、原告、被告のどちらが勝っても控訴が見込まれ、最高裁まで争うことになれば、さらにあと数年はかかるかもしれないとの事。

この様な事案により、一部区間は2031年度になることが明らかになっており、また、静岡県区間の工期は、10年程度を見込んでいるため、2024年に事業着手したとしても、開業は早くても2034年ごろになるという。

また、「名古屋駅~新大阪駅間の工事」は、名古屋開業後10年程度はかかるので、新大阪開業は早くても2040年代半ばになりそうだという。

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まとめ

リニア中央新幹線の事業は、構想から50年以上が経過して、技術的な進歩もあってようやく工事に着手し、東京都品川駅~大阪府新大阪駅間の開業を期待されている夢の超特急だ。

関連自治体も期待は大きいと思うが、工事にあたっては近隣住民の理解を求めるための丁寧な説明が必要だが、開業ありきで話を進める態度は、反発を生むだけだ。

何か新しい物事を進めるためには、相互の理解と協力が必要だが、報道を見ている限りでは昭和の人間にありがちな「高圧的」「感情的」で「衝動的」な言動がみられ、この様な言動は慎まなければ、お互いの利益を損なう結果となってしまうのでなないか?と思ってしまう。

それは残念でならない。

お互いを尊重した対話を期待したい。

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