寒さも一段落し、いよいよ「お花見」の時期となってきた。
とは言っても、春先の気候は「三寒四温」と言って、日本では3月になると、低気圧と高気圧が交互にやってきて、3日程度寒くなった後、今度は暖かくなり、周期的な気温の変化を繰り返しながら、徐々に温かくなってくるものだ。
関東地方では、例年3月20日以降から4月初旬にかけてがお花見のピーク。
東京では上野公園でのお花見が人気で、毎年多くの人々が訪れるお花見の名所だ。
2020年から2022年までの3年間はコロナ渦で、飲食を伴う宴会は出来なかった。
2023年は「お花見宴会」が4年ぶりに「解禁」となったが、各地の桜の名所では、宴会時の騒音やゴミの放置などのマナー違反が、取り沙汰されていた様だ。
ここでは、上野公園内での「お花見宴会」で人気の場所や、公園の注意事項についてみてみよう。
上野恩賜公園(上野公園)の桜の歴史
上野恩賜公園(うえのおんしこうえん)通称:上野公園は、1873年(明治6年)日本で最初の公園として指定されている。
ここは、江戸時代、東叡山(とうえいざん)寛永寺(かんえいじ)の境内地であり、明治維新後に官有地となり、1924年(大正13年)に宮内省を経て、かつての東京市に下賜(かし)され「恩賜(おんし)」の名称が付いている。
現在では、公園内には約800本、公園の周辺一帯を含めると約1,200本の桜の木が植えられており、毎年春にはたくさんの人が訪れる「お花見」スポットとしても有名。
上野の桜が有名になったのは、江戸時代にさかのぼるとの事で、現在の上野公園エリアに位置する東叡山寛永寺の境内に、初めて桜の木が植えられたことが始まりだそう。
このお寺は、徳川家康により1625年ごろ創建されたもので、寛永寺では吉野山から桜の苗木を取り寄せ、それが寛永寺の僧侶たちの手で境内に植えられたとの事。
吉野山は、桜の名所として既に知られており、その苗木を上野に持ち込むことで、その後上野が桜の名所として人々に親しまれるようになったそう。
この様な経緯により、上野の桜は江戸時代の人々にとっても、特別な存在となったという。
江戸幕府の第3代将軍、徳川家光時代には、これがさらに推進され、上野公園には多くの桜が植えられ、現在も多くの人が楽しむことができる桜の名所となっている。
明治以降、寛永寺の境内は上野公園となり、植えられた桜も「ヤマザクラ」から「ソメイヨシノ」へと変わったが、今も昔と変わらず多くの人がお花見に訪れている。
桜「ソメイヨシノ」は、なぜ一斉に咲くのか?
「ソメイヨシノ」は1730年頃、江戸の染井村(現在の東京都豊島区駒込)で誕生したと言われてをり、「オオシマザクラ」と「エドヒガン」の交配で生まれたとされるが、突然変異で誕生したという説が有力だそう。
「ソメイヨシノ」はクローン
幕末以降、全国へと広まっていったが、現在植えられている「ソメイヨシノ」は、交雑種のなかでも、とりわけ美しい花を咲かせる個体を、「接ぎ木」などの手法で増やしたものだとの事。
現在の「ソメイヨシノ」は、「接ぎ木」などでしか、繁殖する手段が無く、種をまいて発芽させ、育てるということができないので、それらの個体は、すべて遺伝的には全て同一の「クローン」であり、今では日本全国に100万本以上あるとも。
遺伝についての話は、ちょっと複雑な遺伝子学の知識がないとわかり難いが、「ソメイヨシノ」はクローン繁殖で増やされているので、たとえ隣にのソメイヨシノの木があって、そこで生産された花粉が受粉したとしても、互いの木は遺伝的には同一で、自個体の花粉と同様に認識されてしまう「自家不和合性(じかふわごうせい)」を持っているため、ソメイヨシノ同士で種子を作ることが無いとの事。
前述したように、各地に植えられた「ソメイヨシノ」は、すべて同じ遺伝子を持つクローンなので、気象条件が同じ場合であれば、一斉に咲きやすくなり、同一地域のいっせい開花につながりやすいといわれている。
また、この様な理由から、開花基準の桜にも選ばれることとなったとの事。
桜の「標本木(ひょうほんぼく)」
ちなみに、桜が開花する時期に注目されるのが「標本木」というもので、全国各地に「標本木」が58本ある。
各都道府県ごとに「標本木」があり、東京では靖国神社の境内に、京都は二条城に、大阪は大阪城公園にある。
樹種は、原則として「ソメイヨシノ」だが、気候によっては根付かない地域があるため、沖縄県(石垣島、宮古島、那覇、南大東島)は「カンヒザクラ」、北海道(稚内、旭川、網走、帯広、釧路)は「エゾヤマザクラ」だとのこと。
ソメイヨシノは開花から1週間から10日で満開となり、その後1週間程度で花が散り始める。
花が咲いてから寒の戻りにより寒くなると、花が長持ちし、反対に雨が降ったり強い風が吹くと、花は早く散ってしまう。
上野公園内の「場所取り」スポット
清水観音堂(きよみずかんのんどう)の付近
清水観音堂(きよみずかんのんどう)は、上野公園入り口近辺の西郷隆盛像から歩いてすぐのところにある。
飲食をするとトイレにも行きたくなるものだが、ここはトイレもすぐ近くにあるため利用しやすい。
しかし、いつも混雑しているから要注意。
引用元:上野恩賜公園
清水観音堂(きよみずかんのんどう)は、京都東山の清水寺(きよみずでら)を模した舞台造りのお堂で、1631年(寛永8年)天海僧正(てんかいそうじょう)によって建てられた。
この清水観音堂の目の前にある松は特に有名で、江戸時代の浮世絵師歌川広重の「名所江戸百景」において(画面左「上野清水堂不忍ノ池」)、そして(画面右「上野山内月のまつ」)として描かれている。
以下がその浮世絵だ。
引用元:国立国会図書館【錦絵で楽しむ江戸の名所】
これが歌川広重が浮世絵に描いた(画面右「月の松」)だ。
月の松は、明治初期の台風により被害を受けて永らく失われていましたが、浮世絵にも描かれていた江戸の風景を復活させるため、平成24年(2012)12月に復元されました。清水堂の舞台から見下ろした月の松には近江の竹生島の宝厳寺に見立てて建立された不忍池辯天堂と参拝の賑わいを望む事ができます。月の松は、江戸時代の植木職人の技の粋を凝らして作り上げた造形と見られていますが、新たに復元された月の松も、現代の造園技術を駆使して造形されました。訪れた人々は気付かずに通り過ぎていますが、境内の端には控えのための小振りの月の松も植えられています。
引用元:台東区文化探訪アーカイブス【台東文化ガイドブック清水観音堂の月の松】
この月の輪の中に、遠目にわずかにのぞける不忍池辯天堂をおさめて写真を撮るのが絶好のスポットとなっていて、この「月の松」の周囲は、お花見でも人気の場所で、お花見シーズンは大混雑だ。
また、清水観音堂内の「秋色桜(しゅうしきざくら)」とよばれる「ヤエベニシダレザクラ」が有名で、現在は9代目、樹齢は30年ほどであるという。
関東地方では、気候にもよるが例年3月20日くらいから4月初旬にかけてがお花見のピークで、「宴会の場所取り」の早い人は、朝の3時からブルーシートを広げて、仲間を待っている人もいる様だ。
公園の開園時間は、朝5時から夜11時までとなっているが、宴会は夜8時には撤収が必要だ。
場所取りの注意事項
上野公園の桜の木が並ぶ「さくら通り」は混雑を避けるため、花見の期間は一方通行になっているので、宴会は出来ない。
公園の開園は、朝5時からでブルーシートを敷く場合は、必ず見張りをする人が必要だ。
なぜなら誰もいなければ、風でシートが吹き飛ばされたり、後から来た人が片づけてしまったりして、トラブルの原因になってしまうからだ。
また、車で行く場合は、駐車場を探さなければならないが、近くの駐車場はすぐ満車となってしまうので、電車で行くのがベストだ。
お花見シーズンは温かくなってきているとはいえ、まだまだ寒の戻りが有り、けっこう寒い。防寒対策をしっかり行おう。
お花見の禁止事項
- 公園にはゲートが無いので入園は自由だが、開園時間は午前5時~午後11時まで。宴会は午後8時まで。
- 机、椅子、テントの持ち込みは禁止。
- 楽器やカラオケ等は使用不可。
- コンロ等の火気使用は厳禁。たばこは喫煙スペースならOK。
- ゴミ捨て場は設けられるが持ち帰ろう。
まとめ
2023年からコロナによる規制も解け、飲食も自由となったが、上野公園は沢山の人が集まる名所なので、マナーは守って楽しみたい。
特に2024年は、外国からの観光客も多く訪れ、昨年(2023年)以上の人出が予想されるので、飲酒等によるトラブルにならないように気を付けたい。
酒を飲む人は、清水観音堂(きよみずかんのんどう)内の句碑「井戸ばたの桜あぶなし酒の酔」の様なことに、ならないようにしたいものだ。
この句は、江戸の昔に13歳の娘が「桜の花見で酒を飲み、酔っ払ったおじさんが、よろけて危うく井戸に落ちそうになる」情景を見て詠んだものだが、令和の現代でも、酔っ払いの行いは変わることが無いな~と思い、その情景を想像すると面白い。
【お花見人気の場所と注意事項】
・お花見の絶好の場所は、清水観音堂(きよみずかんのんどう)付近。
・場所取りは、シートを敷いて見張り番を付ける。早い人は朝5時の開園から場所取りをしている。
・宴会の時間は、夜8時まで。
・上野公園には電車で向かう。
・風が強いと昼間でも寒くなるし、夜にもなれば気温が低くなるので、防寒対策が必要。
【公園内の禁止事項】
- 公園にはゲートが無いので入園は可能だが、開園時間は午前5時~午後11時まで、宴会は午後8時まで。
- 机、椅子、テントの持ち込みは禁止。
- 楽器やカラオケ等は使用不可。
- コンロ等の火気使用は厳禁。たばこは喫煙スペースならOK。
- ゴミ捨て場は設けられるが持ち帰ろう。
職場の皆と行くか、友達同士で行くか、それは皆さんの自由だ。
気分も上々!
開花が待ち遠しい。